児童生徒の不安払拭へ 学校も「新生活様式」

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  • 2020年5月29日

 新型コロナウイルスの感染拡大により、臨時休校が続いていた苫小牧市内の小中学校が6月1日、再開する。文部科学省が「学校の新しい生活様式」を示す中、各校は児童や生徒の不安を払拭(ふっしょく)しようと、あの手この手で対策を強化している。教室で座席の間隔を空けるなどの対応にとどまらず、さらに遊び場で飛沫(ひまつ)対策を徹底したり、子どもたちの心をケアしようと研修したり、教諭たちも未知のウイルスやその影響と戦うため試行錯誤している。(高野玲央奈、金子勝俊)

 文部科学省は密閉、密集、密接の「3密」を避ける新しい生活様式を踏まえ、学校の行動基準をまとめている。地域の感染レベルを3段階に分けた内容で、苫小牧市教育委員会は市内の感染レベルを6月1日以降、最も低い「レベル1」と判断。27日付通知で各校に感染症対策を求めた。

 内容は可能な限りの徹底と実情に即した柔軟な対応など。不特定多数の児童や生徒が手を触れるドアノブ、手すり、スイッチなどは1日1回以上の消毒を要求する一方、マスクの着用は熱中症が懸念される日は「外してもよい」とした。

 各教室の座席配置も間隔の目安を1メートルとしつつ、1メートルが確保できない場合でも「できるだけ距離を離し、換気を十分に行う」と提案。瀬能仁教育部長は「教室や机の大きさが決まっている中、物理的に無理な学校もあるが、感染予防に努めてもらえれば」と狙いを強調する。

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 勇払小学校(森晶子校長)は座席間隔を最低1メートル離した。児童数は全72人、1学年当たり7~17人の小規模校とあり、森校長は「対策する上で恵まれている」と説明する。教職員が啓発や対策に必要な物をできる範囲で手作りし、児童に感染対策の自覚を促す効果にもつなげる。

 例えば児童が休み時間に使う「まなびの広場」では、オセロや将棋などを楽しむ机席に、ビニールクロスで飛沫対策を施した。フックを天井に掛け、たこ糸をつるし、クロスを垂らした。机から高さ約20センチは空け、手は自由に盤面を触ることができる。

 いずれも教材の余りを活用し、校務補の西島利昭さん(64)は「子どもたちが安全に楽しんでくれたら」と目を細める。6月の再開後には教諭と児童の個人面談も予定しているが、クロスと端材で手作りした間仕切りを活用する予定。子どもたちとの向き合い方も工夫しながら細かく心のケアに当たる。

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 休校が長引いたことで子どもたちの心身に与える影響を懸念する声は強い。緑陵中学校(荒川歩校長)も再開後、生徒に「心と体のアンケート」を予定。再開に先駆けて生徒の「心の健康」に焦点を当て、教諭ら約20人が研修の時間を設けた。

 スクールカウンセラーの上井理絵さん(41)が教諭らを「指導」。資料を配りながら「心理的トラウマが起こり得る前提条件が多い」と警鐘を鳴らし、「行事や中体連がなくなり、例年のような連帯感、充実感を得られない可能性がある。今できる方法で目的を持って取り組みを」などとアドバイスした。

 教諭らは対処法を学び、星祐貴教諭(27)は「子どもたちの内情を知ることに重きを置きたい」と気持ちを新たにした様子。荒川校長は「小さなサインを見逃さないことが大事。生徒一人一人と丁寧に接したい」と力を込めた。

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