【3】 折居彪二郎が描いたチョウ 観察眼と絵の才能

  • 特集, 苫小牧市美術博物館企画展より 川と生き物
  • 2020年5月28日
細部まで描写された絵

  20世紀初頭、生物学者の依頼を受け、研究のために鳥や獣を採集していた一人の人物が美々川のほとりに住んでいた。日本を代表する鳥獣採集家、折居彪二郎(おりいひょうじろう・1883~1970)。

   折居の射撃や標本を作成する技術は非常に高く、当時の著名な鳥類学者の山階芳麿(やましなよしまろ・皇族)や黒田長禮(くろだながみち・福岡藩黒田家第14代当主)らの依頼を受け、国内はもとより満州やミクロネシアなど広範な場所で採集活動を行った。折居が採集した標本を基にして新種16種、新亜種84種が発見されるなど鳥類学の発展に大きく貢献したことから、その功績をたたえて鳥類学の分野では「東洋のオリイ」と呼ばれた。

   また、折居は絵の才能もある。当館では約100年前に描かれたチョウやガの絵を保管している。折居の絵を専門家が見ると、種類をほぼ特定できるほど細部まで観察して描かれている。

   折居が終生の住み家としたのが美々川のほとりだった。折居がなぜ美々川を選んだのかは定かではないが、カモなどの鳥類の記録をつけた観察日記や山階芳麿の回顧から、美々川の豊かな自然に引かれていたことをうかがい知ることができる。

   本展では遺族から寄贈されたチョウの絵、黒田や山階との交流がうかがえる書簡、鳥類の剥製などを展示している。

  (江崎逸郎学芸員)

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