サケのふるさと千歳水族館で秋冬にかけて行われるサケの「採卵体験」が人気を集めている。雌の親魚から取り出した卵を授精し、芽生えた新しい命は来春千歳川から海へと旅立つ。生命の神秘を学ぶ体験プログラムは、12月8日に最終回がある。
サケの遡上(そじょう)期の限定企画は今年、9月23日から12月8日までに全6回開催。これまでの5回、希望者は毎回定員の32人に達する人気ぶり。水族館のホームページから申し込める手軽さもあり、「地元のほか札幌はじめとする道内各地、情報誌を見た本州方面からの申し込みも少なくない」(同館)という。
今月中旬の採卵体験には地元や札幌、遠くは大阪から12組36人が参加。事前に飼育担当者がサケの雌雄の見分け方、インディアン水車での捕獲や水族館へ移送する様子などを映像で紹介。「サケはもともと白身の魚。身が赤く、イクラがオレンジ色なのは餌のオキアミを食べるから」などと解説。サケの人工ふ化放流を目的に捕獲した親魚から採卵して毎春3000万匹の稚魚を千歳川に放流していることや採卵の作業手順を説明する。
この後、参加者は水槽から取り出したサケの親魚から採卵する。緊張した様子で専用ナイフで雌の腹を割き、卵をボウルに集めてから雄の白子を掛け、かき交ぜて受精卵になるのを促した。子供たちからは「雌のおなか、ぷよぷよだね」などと感想が聞こえる。
初めて採卵を体験した大阪府岸和田市の小学5年生の前田倖奈(ゆきな)さん(10)は「サケは冷たかった。おなかは軟らかだった」と笑顔で話した。