千歳市立図書館はこのほど、講演会「北海道の作家たち」を同図書館で開催した。北海道立文学館=札幌市=との共催で、同文学館の主任学芸員、吉成香織さんが有島武郎や小林多喜二など、本道の出身やゆかりのある作家について語った。
読書推進運動協議会が定める読書週間(10月27日~11月9日)の事業の一環。吉成さんの専門は、日本近代文学。2007年から学芸員として務めている。
吉成さんは明治時代に札幌農学校が設立されて以降、「優秀な人材が集まり、文学を読む、書くという知的関心が根付きました」と解説。同校出身の有島武郎などを例に挙げた。
岩手出身で新聞記者として1年近くを道内で過ごした石川啄木らの作品も紹介。大正から昭和初期にはプロレタリア文学作家の小林多喜二が活躍したことを挙げ、「銀行に勤めるエリートでしたが、(幼少期から)小樽築港の埋め立てで労働者が酷使されているのを見ていて、貧しい人への思いが強くありました」と作風の背景を語った。
またアイヌ民族としてカムイユカラ(神謡)をまとめた「アイヌ神謡集」を19歳で出版した知里幸恵も取り上げ、同作を「アイヌ語をローマ字で表記した上で、翻訳しました。(内容には)アイヌ文化が色濃く出ています」とするなど、アイヌ民族の歌人や作家についても触れていた。