動画構造の解体と再構築をテーマに制作や研究活動を展開する映像作家・大島慶太郎(1977~)=札幌市在住=は、デジタルカメラによる写真撮影で得た画像を素材とする実験的な映像作品を制作している。
本展においては、絵はがきという記録媒体を視覚的な伝達メディアとして捉え、手で触れることができ、時間の経過に伴い劣化してしまうモノとしての特性に注目した。
当館の展示ケースに3台のモニターを設置し、素材となった絵はがきを映し、実物を併置することで、新たな見せ方を試みた映像作品「re―girl―flash」をはじめ、展示室の壁面に「煙と質感/Smoke and Texture」を投影するなど、さまざまな展示方法を試みている。
当館所蔵の歴史資料の中から、苫小牧市の昭和期の絵はがきを近接撮影した「トラベルプレイ/Travel Play」は5台のモニターを使って展示。インクのドットが見えるまで接写された画像などが流動的に映し出され、主題や意味内容を超えて存在する物質性を際立たせる。
大島の映像作品には、一貫して質感の再現に対する探求心が見受けられる。苫小牧という場所の特性に対するまなざし、「旅」や「観光」といった普遍的なイメージが断片的に織り交ぜられることで、見る者の想像力や感覚を大いに刺激することだろう。
(苫小牧市美術博物館学芸員 細矢久人)
(おわり)