(3)グラフィックデザイナー・小島歌織 苫小牧の風物に焦点

「SUMMIT」2019年制作

  苫小牧市生まれ、札幌市在住の小島歌織(1982~)は、グラフィックデザイナーとして広告などのデザインを手掛ける傍ら、消費やそれによって生まれたライフスタイルをテーマとする創作活動を展開する。

   本展で紹介するポリエチレン製のレジ袋に、小島が考案したデザインをプリントした14点からなるシリーズ作品「SUMMIT」は、デザイナーならではの作品。同シリーズのタイトルは、主に胆振管内で用いられるレジ袋の呼称「サミット袋」に由来する。

   レジ袋を人間の欲望を投影する容器として捉える小島は、苫小牧に住んでいた頃の記憶を着想源としながら、樽前山やしばれ焼きなど、同市の風物に焦点を当てている。優れた造形性とユーモアに富んだデザインは、袋をアクリル板に挟み込むことで使用感を明瞭にするユニークな展示手法と相まって、軽妙酒脱なアイデアとポップな感覚が際立つ。

   また、赤と白の紙テープを積み上げ、煙突に見立てた作品「煙突テープ」、バドミントンのシャトルの羽を緑色に着色した「小かぶのシャトル」など、モノの本来の意味とは異なるイメージを連想させる象徴的なオブジェも見どころの一つだ。

   小島は本展のチラシのデザインも手掛けており、その制作過程やメインのグラフィックとして用いられた、モノへのまなざしを暗示する瞳のオブジェの加工処理などを示す資料もご覧いただくことができる。

  (苫小牧市美術博物館学芸員 細矢久人)

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