苫小牧市美術博物館で、企画展「NITTAN ART FILE3 内なる旅~モノに宿された記憶」が開かれている。胆振、日高ゆかりの作家4人が美術と博物の複合施設である同館の特性を生かした現代アートを出品しており、同館学芸員の細矢久人さんが、4回にわたり各作家の魅力や作品を紹介する。
◇
写真やドローイング(線画)、粘土による造形物など、多彩な表現手法を駆使しながら空間を構成する美術家・浅井真理子(1963~)=埼玉県在住=は、本展準備期間中に滞在した北極圏の町で着想を得たという物語「四つの谷の話」を母体とする展示で博物展示との連動性を創出することを試みている。
浅井は、自身の創作物のみならず、当館所蔵の動物の毛皮や備品、そして各地で発見した石など、独自の視点によりオブジェを見いだしていく。それらを物語の世界観とリンクさせるように設置する作品群は、観覧者に「内側」と「外側」、「自己」と「他者」を意識させ、見える外界の事物と内面世界の呼応を示している。
近年、浅井が探求している写真シリーズに「ガラスノメノシセン_see out of sight」がある。同シリーズは、当館や他の博物館などで撮影した剝製の顔の写真と、その視線の先を写した写真を組み合わせ、剝製のまなざしの「内側」と「外側」を意識させる。
感知し得ない関係性を日常性の中から抽出し、あえて明確な答えを持たないその作品群は、ミュージアムというモノとヒトが交差する地点において見る者の想像力を喚起させ、「内なる旅」へと導く道しるべとなることだろう。
◇
企画展は11月24日まで。午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。観覧料は一般300円、高校、大学生200円、中学生以下無料。