白老町虎杖浜のアヨロ海岸沿いに連なる岸壁の一部の岩から水が噴き出し始め、浜に訪れる人たちを驚かせている。岩の亀裂から勢いよく流出が続いており、アイヌ民族の伝説が残る地で突然のごとく起きた不思議な現象に、この海岸をよく知る人たちは「こんな光景は見たことがない」と珍しがる。
水が出てきた岩は、アイヌ民族の神話の地「オソロコッ」や「カムイミンタラ」の付近にある。岸壁から突き出た高さ5メートルほどの大きな岩の下部から、水道の蛇口をひねったかのように水が噴き出ており、別の亀裂からも水がチョロチョロと流れ出ている。岩は波打ち際の近くにあるため、干潮の時間帯でしか確認できない。
虎杖浜地区に住む男性(58)によると、今年7月中旬、海岸を散歩していた際に発見したといい、「虎杖浜で生まれ育ち、アヨロ海岸は幼少の頃からの遊び場。よく知っている所だが、こんな現象を目にしたことはない」と驚く。
アヨロ海岸一帯の地層は倶多楽火山由来の岩石層で、岩棚を形成しており、海岸沿いに岸壁が連なる特異な景観をつくっている。アイヌ民族の神話が数々残る場所としても知られる。その岩壁の一部の岩から流れ出る水は、地層に染み込んだ雨水とも考えられるが、原因ははっきりしていない。
アイヌ文化の調査で40年近くアヨロ海岸に通っているという苫小牧駒沢大学の岡田路明客員教授も「海岸には何度も足を運んでいるが、このような光景を見たのは初めてだ」と、謎めいた現象に首をかしげるばかりだ。