札幌市在住で鳥類調査専門家の松岡和樹さん(46)が、苫小牧市内で2021年に撮影した世界初のアオバトの子育ての映像が、市美術博物館で公開されている。開催中の企画展「足もとから見つける、まちの自然」の中で紹介され、松岡さんは「生物多様性に関心を持ってもらえたら」と来場を呼び掛けている。企画展は3月16日まで。
アオバトは全身が緑色のハトの仲間で、道内では繁殖期の夏によく見られる。昔から全国に分布するが、▽巣が目立たない▽産卵可能期間が絞れない―などの理由からほとんど研究されてこなかった。
地域環境計画(東京)の北海道支社で生物多様性推進室長を務める松岡さんは20年からアオバトの生態調査を本格化させ、21年から苫小牧市での観察調査に着手。丸山の森に入って営巣木を探し出し、望遠機能を備えたビデオカメラを設置した。
無人状態で撮影を続け、同年8月に初めて、巣から離れた枝で親鳥の羽に包まれているひなの様子を捉えた。市内での映像記録は24年までに151・5時間分に上り、▽抱卵期▽巣内または巣外のひなを育てる時期▽親鳥の巣の滞在状況―などをデータ化。親鳥の巣の出入りは1日2回ほどと少ないことや、巣を離れた直後のひなは営巣木内の移動で精いっぱいだが、親鳥に促されながら3日ほどで別の木まで飛べるようになることも分かってきたという。
松岡さんは21年に撮影した中から、10分ほどの映像を同企画展に提供。1日には同館で講演会も開き、市内外からの来場者35人に映像を見せながら、生態については不明な点が多いことも解説した。
松岡さんは「まだ知りたいことがある」と市内での調査活動を今年も続ける方針で、「希少種だけでなく、よく見掛ける生き物も含め、生物多様性への関心がゼロから一に変わるきっかけをつくれたら」と意欲を見せる。