110年以上前の植物標本 苫小牧研究林で見つかる

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  • 2025年6月3日
110年以上前の植物標本を整理する倉田助教(右)ら
110年以上前の植物標本を整理する倉田助教(右)ら

 苫小牧市高丘の北海道大学苫小牧研究林で110年以上前に採取された植物の標本300点近くが敷地内の森林資料館で見つかり、助教らがデータベース化を進めている。標本制作には著名な植物学者の工藤祐舜氏(1887~1932)が携わっており、保存状態は良好。当時の植生を今に伝える貴重な資料だ。今年度内にデータベース化した後、北大総合博物館(札幌)にデータごと移管する予定。14日午前11時から同研究林で開く生物標本をテーマにしたイベントの中で、標本の一部を公開する。

 標本は、森林資料館の倉庫内に保管されていた段ボールの中から発見された。乾燥した草花が1点ずつ、厚紙に「押し葉」のようにのり留めされ、新聞紙に挟まれていた。

 それぞれ採取日、学名、和名、採取者が記載され、種類によっては葉だけでなく、花弁や種、実も劣化なく残っている。大きさや形、色まで判別できる状態という。

 同研究林によると、当時、東北帝国大学農科大学(後の北大)教員だった工藤祐舜氏と指導学生だった吉見辰三郎氏が1914年7~9月と15年6月にそれぞれ採取、制作したとみられる。

 これまでに294点見つかっており、アケボノソウやクリンソウ、ヤマオダマキなど植生が変化したり、エゾシカによる食害などで姿を消したりした植物も標本化されている。

 14日のイベントでは、すでに研究林では見られなくなった種を中心に10点ほどを公開。生物標本のDNA情報を生かした研究で、絶滅危惧種のチョウ類を守る活動に取り組む兵庫県立大の中濱直之准教授が標本の活用法などについてオンラインで講演する。その後参加者は植物観察会に臨み、植物標本作りも体験できる。

 申し込みは、専用サイトから=QRコード=定員は先着20人。高校生以上を対象としており、中学生以下は保護者同伴とする。参加費1人500円。

 同研究林の倉田正観助教は「標本はとてもきれいで、100年前の研究林の植生を知ることができる貴重な資料。イベントではその価値についても伝えられたら」と話す。

 問い合わせは苫小牧研究林 電話0144(33)2171。

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