私事ですが、昨年度で36年間の教員生活が終わりました。退職後は、興味のあることやこれまでできなかったことに積極的に挑戦していこうと思っていた矢先に「ゆのみ」の執筆依頼を頂きました。張り切って苫小牧民報社の担当者に会いに行きました。この時、「初めまして」の次に出すはずの名刺がないのだということに、はっと気付きました。「すみません。名刺がないので」と笑顔で言いましたが、この時初めて小さな寂しさを感じました。

　名刺のない自己紹介は、私のこれまでの社会的な居場所や社会とのつながりが「もうありませんよ」と、はっきり教えてくれたのです。退職に伴ってなくなる名刺や肩書。人それぞれに大なり小なりの寂しさがついて来るのだろうと思います。「わーい、退職」と思っていた私も、ちょっと寂しいなと思った瞬間でした。しかし、仕事をやり切って卒業するのだと考えて、社会や人との新しいつながりをつくることが大事なのだと思っています。

　女性管理職が少ない中、家事、仕事、育児、介護などを「これまでよく頑張ってきたよ」という友達の褒め言葉を思い出し、民報社訪問で、名刺のある自分からきっぱり卒業しました。

　これから1年、「ゆのみ」を執筆させていただきます。学校という世界しか知らない者が、さまざまな挑戦をして思ったこと、感じたことなどを書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

　（前苫小牧沼ノ端小学校長）