鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」の第4次再審請求審で、鹿児島地裁(中田幹人裁判長)は22日、殺人罪などで懲役10年が確定、服役した原口アヤ子さん(95)の再審開始を認めず、請求を棄却する決定をした。弁護側は即時抗告する方針。
原口さんは捜査段階から一貫して無実を主張したが、共謀したとされた親族らの自白などを根拠に有罪とされた。服役後に申し立てられた1~3次の請求審では、地、高裁で計3回、再審開始が認められたが、最終的にはいずれも退けられていた。 第4次請求審で弁護側は、急性腸管壊死(えし)が死因だとする救命救急医による医学鑑定を新証拠として提出。男性は、確定判決が認定したタオルによる絞殺ではなく、直前に発生していた側溝への転落事故のため、「犯行時刻」の2時間前には死亡していた可能性が高いと主張した。
決定で中田裁判長は、鑑定は解剖時に撮影された写真から、推論を重ねて結論を導いていると指摘。事故で頸椎(けいつい)を損傷した可能性は否定できないとして証明力を限定的に認めたものの、死因や死亡時間を決定的に推定はできないとし、絞殺に合理的な疑いは生じないと判断した。
関係者供述に矛盾があるとする新たな鑑定も、供述の信用性を減殺するものではないと退けた。その上で、弁護側の新証拠について、「確定判決の事実認定を覆すに足りる蓋然(がいぜん)性のある証拠とは言えず、無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらない」と結論付けた。
原口さんの第1次請求審では地裁が再審を認めたが、高裁支部が取り消し、最高裁で確定。第2次請求審は退けられ、第3次請求審では地、高裁段階で認められた再審開始決定を、最高裁が2019年6月に取り消した。