東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが国に損害賠償を求めた集団訴訟の上告審判決が17日、最高裁第2小法廷であり、菅野博之裁判長は原発事故に対する国の責任を認めない判断を示した。「発生した地震は想定された地震よりもはるかに規模が大きく、東電に安全対策を命じても原発事故を防げなかった可能性が高い」と述べた。
裁判官4人のうち3人の多数意見。三浦守裁判官は反対意見を付けた。
福島、群馬、千葉、愛媛各県の避難者計3663人が起こした4訴訟をめぐる初の統一判断。全国で約30件ある同種訴訟に影響するとみられる。
判決はまず、事故以前の津波対策について、「防潮堤、防波堤を設置することで浸水を防止することを基本としていた」と指摘した。
2002年7月に政府機関が巨大津波を伴う地震の可能性を予測した「長期評価」に信頼性があるかどうかが争点の一つになっていたが、津波到来を予測できたかについては判断を示さなかった。
長期評価に基づく津波高の試算結果は合理性があったとし、国が規制権限を行使していれば防潮堤などを設置する対策が講じられた可能性が高いと判断した。
原告側は防潮堤だけでは不十分だとしてタービン建屋などの水密化なども講じるべきだったと主張していたが、判決は「防潮堤が不十分だと解すべき事情はうかがわれない」として退けた。
その上で、防潮堤の設置を講じていた場合に事故は防げたかどうかを検討。長期評価に基づき想定された地震はマグニチュード(M)8・2前後だったのに対し、東日本大震災はM9・1で、「原発敷地への浸水は防ぐことはできなかった可能性が高く、実際に起きた事故と同様の事故が発生していた可能性が相当あったと言わざるを得ない」と結論付けた。