白老町環境町民会議(粂田正博会長)はこのほど、ヨコスト湿原の自然環境調査結果を町に報告した。鳥類と植物の調査を前回(2010年)と比較し、考察を加える形でまとめた。町が23年度に予定している同湿原の自然環境調査の基礎資料となる。
鳥類調査は21年4月~22年2月、町や日本野鳥の会、ヨコスト湿原友の会の計5人が同湿原や海岸、海洋で延べ92回実施。前回より16種多い80種が観察され、コハクチョウ、カワアイサなど33種が新たに確認された。一方、チュウヒ、キジなど前回確認された17種は未確認となった。キジが見られなくなったことについて報告書は、家庭ごみの不法投棄によりキツネが増えたことが原因とみている。またエゾシカの食害で湿原の風景が変わったとし、「植生変化が顕著になれば昆虫や野鳥の生育にも影響が出るだろう」と考察している。
植物調査は友の会とアイヌ民族文化財団の5人で21年5~10月、湿原と海岸で、草花を中心に行った。168種を確認したものの「コロナ禍のため調査が予定通り進まず、前回と比較考察できるレベルに至らなかった」としている。湿原の風景を形成する植物のイソスミレの群落は近年、車の乗り入れや高潮被害から花の勢いが弱くなっているという。湿原の乾燥化も進み、カエルが産卵していた沼地が干上がるなど「生物の生息が心配な状況」とまとめている。
湿原の保全対策として、行政と町民団体で巡視を行い、▽不法投棄や盗掘防止▽イソスミレ保全のため「調査研究中」の看板設置▽野鳥営巣地への立ち入りを禁止する啓発活動の実施―などを提案している。
二つの調査に関わった友の会の中野嘉陽会長(82)は「昆虫調査などが不十分だった点はあるが、野鳥調査は十分なものにできた」と話している。