厚真町で最大震度7を観測するなど道内全域を襲った胆振東部地震から、6日で2年がたった。被害が大きかった厚真、安平、むかわの3町ではインフラの整備が着実に進み、少しずつだが復興に向けた歩みが始まっている。その一方で、仮設住宅入居期限が早い世帯で10月末に迫っており、3町共通して最優先事項にしている住まいの再建が急がれるほか、震災で傷ついた心のケアは引き続き取り組んでいかなければならない課題だ。
■順調に進むインフラ整備
3町の町長がいずれも手応えを挙げるのは、インフラ整備の進捗(しんちょく)状況だ。主なところで見ると、厚真町では今年7月末までに富里浄水場が給水を再開し、安平町では震災後の余震などにより斜面の崩落や地盤の亀裂の恐れがあるとして、早来北進地区や追分柏が丘地区など最大81世帯に出されていた避難指示が2月までに全て解除された。町でそれぞれ発注している道路や河川、公園などの公共土木工事についても、安平町は今年度で全て終わる予定。厚真、むかわの両町でも来年度までに完了するめどがたった。
■迫る仮設住宅の入居期限
災害救助法による原則2年の仮設住宅入居期限は10月末以降、順次その日を迎えることになる。入居者は8月末時点で3町合わせて500人ほど(福祉仮設住宅、鵡川高校野球部寮入居者は除く)。整備はおおむね順調に進んでいたが、ここに来て新型コロナウイルスの影響から、厚真町の公営住宅の一部で完成に遅れが生じるなど不透明な部分もある。
むかわ町では現在建設中の公営住宅、災害公営住宅の入居が可能になる時期と、大原の仮設住宅の入居期限がともに10月末と日程が重なることから、道に期間の延長、猶予の検討を要望。今月上旬に道の理解を得て、応急仮設住宅の入居期限を1カ月延長する方針を固めた。
全国初となる福祉仮設住宅が整備された厚真、安平両町の特別養護老人ホームについては12月中に新たな施設が完成予定。鵡川高校野球部の新しい寮も年内には工事を終え、住み替えが始まる見通しだ。
■引き続き重要な心のケア
国施行による工事は2023年度まで続く見通しだが、厚真町を中心に大規模な土砂崩れが発生し、むき出しになった山肌も数カ所で土砂の撤去やコンクリート整備により地盤の安定化が図られ、緑が戻り始めている。また、基盤産業でもある営農もほとんどの農家で再開し、復旧する姿は目に見えるようになってきた。
しかし、復興まではまだまだ時間がかかりそう。震度7や6強を観測した激しい揺れは、体験した人にしか分からないトラウマや苦悩を残し、傷ついた心を癒やすには時間だけでは解決できないことも改めて痛感させられた。
震災時、厚真町内で暮らしていた女性は「今でも少しの揺れで体が震える」と言い、ある学校の男性教諭は「私自身も2年前の地震のフラッシュバックが起きることがあるし、子どもならなおさらだろう」と気遣う。今、被災3町の学校や教育機関では、児童、生徒の心のケアを継続する一方で、「震災の記憶を風化させてはいけない」と、避難訓練や防災学習を通して「自分の命は自分で守る」意識付けを積極的に進めている。
世界的に新型コロナウイルス感染症が流行する中、生活再建など山積する課題に向き合い、この先の復旧・復興をさらに加速させていかなければならない。これまで以上に地域に寄り添いながら、輝きを取り戻す一助になれるよう報道を続けたい。
(胆振東部支局・石川鉄也)