29日開業を予定していた白老町のアイヌ文化復興拠点、民族共生象徴空間(ウポポイ)が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて再延期されることが決まった8日、苫小牧市など周辺の関係者の間にも落胆が広がった。道内外で感染拡大が続いている現状を踏まえた判断に理解を示しながら、開業が「当面延期」とされたことに「地域経済にもダメージが出る」との声も上がる。
胆振、日高の経済活性化などに取り組む「北海道新幹線×nittan(日胆)地域戦略会議」の会長、岩倉博文苫小牧市長は「札幌での感染が落ち着かない限り、道内全体の収束は見えずやむを得ない」と今回の判断に理解を示した。開業時期が見通せないため「関係者の心中はいかばかりか」と気遣いつつ「きっちりとした気持ちで開業を迎えることが今後にとってもよいはず。日胆地域としても開業に向けた機運の醸成などに協力していく」と力を込めた。
苫小牧商工会議所の森本恭行専務理事も「残念だが仕方ない。無理に開業するのではなく、感染拡大の収束を優先させるべき」と強調。その上で、地域経済が冷え込む中、「ウポポイに人が集まれば観光や宿泊、飲食などにプラスとなるが開業が延期されて影響を心配している。地域経済がダメージを受けるのは間違いない」と話した。
苫小牧アイヌ協会の作田悟会長は「開業を楽しみにしていたので残念だが、世の中がこのような状況なので仕方ない。自分たちだけが特別ということはない」ときっぱり。アイヌ文化を発展、復興させる拠点施設の開業を、すべての人に応援してもらいたいという思いを込めて「早く落ち着いて開業することを願う」と語った。
道南バス(室蘭市)も29日運行開始を予定していた、ウポポイ―登別温泉間の路線バス新設を、ウポポイの開業再延期に合わせて先送りする。