白老町の文化施設・しらおい創造空間「蔵」で3日、「ポスト・コロナ時代のまちと文化創造」と銘打ったシンポジウムが開かれた。民族共生象徴空間(ウポポイ)の関係者や文化活動に取り組む町民らがパネリストとなり、白老の文化的魅力を世界に発信していこうと呼び掛けた。
NPO法人しらおい創造空間「蔵」(毛笠史寛会長)が主催したイベントで、第1部は「白老から世界へ、世界から白老へ」と題したシンポジウムを開催。ウポポイ文化振興部長の野本正博さん、国立アイヌ民族博物館長の佐々木史郎さん、星野リゾート(長野県軽井沢町)北海道統括総支配人の相内学さんがパネリストを務めた。
野本さんは「ポロトコタンの50年、土地の記憶より」をテーマとし、1965年のポロトコタン開設、84年のアイヌ民族博物館開館と2018年の閉館、昨年7月のウポポイ開業に至るまで、半世紀以上にわたりポロト湖畔で続いた観光とアイヌ文化伝承・発信の活動について説明。地元アイヌ関係者が自ら運営したポロトコタンが国のウポポイ整備で失われたことに触れ、「活動の独自性を失ったものの、今後の地元の文化活動については誰かに頼るのでなく、まずは自分たちが真剣に考えるべきものだ」と指摘した。
また、アイヌ文化については「(相手を尊び敬う)畏敬の念が隠されている奥深い文化。伝統を守るだけでなく、新しいものを創造し取り入れてきた柔軟さもある」とし、「今も生きるアイヌ文化を分かりやすく伝えていきたい」と述べた。
佐々木さんは、国立アイヌ民族博物館が白老町に開設された理由について「アイヌ自らが営む旧博物館の存在やポロトの自然環境といった素地が大きな決め手となった」と説明。アイヌ文化を国内外へ発信していく意欲を示した上で、今後の活動に関して「地元との連携をどう図るかが課題だ」と話した。
相内さんは、来年1月14日にポロト湖畔で開業する温泉宿泊施設「界ポロト」を取り上げ、「世界中に白老やウポポイの魅力をアピールし、一緒に地域の文化、観光を盛り上げていこう」と呼び掛けた。
第2部は「白老で生まれたクリエーティビティ」と題し、地元で文化・芸術活動に関わる4人が登壇。飛生アートコミュニティーを運営する彫刻家の国松希根太さん、シンガー・ソングライターの大学生さっちゃん、地元出身で東京の映像制作会社に勤める広告プランナー中谷公祐さん、地元人気パン店ブーランジェリーニシオを経営する西尾圭史さんが、郷土白老や文化芸術発信拠点「蔵」への思いなどを熱く語った。
来場者はパネリストらの話に耳を傾けながら、地域を再生し発展させる文化創造について理解を深めた。シンポジウムはオンラインでも配信された。