白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館(佐々木史郎館長)で、第1回交流室展示「ケレ ヤン、ヌカラ ヤン、ヌ ヤン さわる、みる、きく、国立アイヌ民族博物館」が開かれている。アイヌ民族の民具など展示物の全てを手で触れるようにし、視覚障害のある人も楽しめるユニバーサル・ミュージアムを意識した新しい試みのイベントとした。
障害の有無にかかわらず、誰もが利用できるユニバーサルデザインの博物館が近年注目を集めている。こうした中で国立アイヌ民族博物館は、視覚だけに頼る従来の展示方法を問い直し、触覚や聴覚も利用して楽しめるイベントを企画。21日から始めた。
会場の交流室(同館1階)では、イタ(盆)やマキリ(小刀)、チシポ(針入れ)、チェプケリ(サケ皮の靴)、アイヌ文様を施した木綿衣など約10点を展示。全てを手で触れるようにし、展示物の解説には点字や音声も取り入れた。初日から多くの来場者が交流室に足を運び、木や樹皮、布などさまざまな素材で作られた民具に触れながら制作技術の高さを実感していた。
会場ではウポポイ内で収録した音や映像も紹介。のみで木を削る音、丸木船をポロト湖に浮かべる際の音など、リアルに再現した音を通じてウポポイやアイヌ文化を体感できるようにした。制作に当たった国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)客員准教授で、映像・音響作家の春日聡氏は「ウポポイに音で触る―をコンセプトとした展示。視覚だけでは分からない世界が伝われば」と話す。
交流室展示は、新型コロナウイルス対策を徹底しながら9月12日まで開催。担当者は「あらゆる角度から博物館を体験、体感できる展示を楽しんでほしい」と来場を呼び掛ける。
関連イベントとして28日にウポポイ・伝統的コタンにあるチセ(家屋)で「音楽を体験してみよう!」、9月12日に同じくチセで「民具をつかってみよう!」をテーマにしたワークショップ形式の体験行事を催す。9月4日に同博物館1階交流室Bで国立アイヌ民族博物館学芸員による「さわる、みる、きく、そしてはなす」と題したギャラリートークも予定している。いずれも事前の申し込みが必要で、「空きがあれば当日の申し込みも可能」と言う。詳細は国立アイヌ民族博物館ホームページで紹介している。