白老町が主催したアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)の町民内覧会は、9日から14日の期間中に約1600人の参加を数えた。オープンに先立って地元住民に公開された国立アイヌ民族博物館などを見学した参加者からは、「アイヌ文化の多様性を伝えようという意気込みが伝わる」「施設が立派で白老に自慢の名所ができた」とおおむね好評を得た。一方、施設の利用を促す上では「リピーターを増やす工夫が必要」と指摘する声も聞かれた。
内覧会は9、10日に町長や町議会議員、アイヌ協会、町内会連合会、経済団体など関係者向け、11~14日に一般町民向けに実施。関係者向けには約300人、一般町民向けには約1300人が申し込み、博物館の展示物や屋外での伝統舞踊などを鑑賞した。
初めて公開された博物館の展示物を見て回った戸田安彦町長は「各地のアイヌ民族の資料が多岐にわたって展示され、素晴らしい。アイヌ文化発信拠点という施設の意義を改めて実感できた」と評価。白老アイヌ協会の山丸和幸理事長は「建物や伝統芸能など、どれを取っても見応えがある。特に若い職員がアイヌ文化を伝えようと頑張る姿こそがウポポイの魅力だ」と話した。
白老観光協会の福田茂穂会長も「予想以上に良い仕上がり。強いて言えば、博物館で白老関係の展示物を増やしてもらえれば」と述べ、ウポポイが地元観光振興につながることにも期待を寄せた。町商工会の熊谷威二会長は「アイヌ文化の復興と発信の取り組みを充実させ、魅力を高めていってほしい」と話し、「体の不自由な人が広い園内をスムーズに移動できるよう、電動車いすなどを配置してほしい」と望んだ。
内覧会初日に参加した町内会連合会の吉村智会長は「素晴らしいの一言だ。博物館2階からのポロト湖の風景も見ものだ」と感動した様子。ウポポイ近くの白老若草町内会の岩間隆一会長も「多様なアイヌ文化を総合的に学べる施設が誕生した意義は大きい。建物も豪華で、今後が楽しみだ」と述べた。
一般町民向けに参加した人々からも好評を呼んだ。家族と一緒に見学した末広町の松居耕司さん(68)は「とにかく建物の立派さが目を引き、感動した。アプローチのコンクリート壁面にアイヌ文化らしいデザインが施され、建物に入る時からわくわくさせる仕掛けがすごい」と絶賛し、早期の開業に期待を寄せた。
施設を運営するアイヌ民族文化財団は、内覧会で入場時の検温や人同士の距離確保、マスク着用など新型コロナウイルス対策も実施した。そうした取り組みについても参加者からは「職員もフェースガードを着用するなどして感染防止に努め、安心した」と評価する声も。一方で「施設見学で入場人数の制限があったり、スムーズに移動できなかったりと少しストレスを感じた」と話す参加者もいた。
また、ウポポイの中核施設に位置付けされている博物館について「建物は立派だが、人を引き付けるような展示物が少ない。リピーターを増やす工夫が必要で、魅力をどう高めていくかが課題だ」との指摘も聞かれた。