待ちに待った 開業へ高まる期待 ウポポイ内覧会始まる

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  • 2020年6月9日

 白老町のポロト湖畔に整備されたアイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)で9日、地元町民対象の内覧会が14日までの日程で始まった。初日は戸田安彦町長や町議会議員、アイヌ協会など各団体の関係者ら約150人が参加。国立アイヌ民族博物館など各施設を見学したほか、屋外で伝統舞踊も鑑賞し、アイヌ民族をテーマにした初の国立施設オープンへの機運と期待を高めた。政府は内覧会の後、新型コロナウイルス感染状況を踏まえて早期開業を目指す。

 当初4月24日に予定していたウポポイ開業は新型コロナウイルスの影響で遅れているが、感染状況の落ち着きで緊急事態宣言が5月下旬に全面解除されたため、国はまず地元町民に公開しようと内覧会を計画。町とウポポイ管理運営者のアイヌ民族文化財団が調整を進めた。

 町の主催とした内覧会は9、10両日に町理事者や職員、町議会議員、アイヌ協会、商工会、観光協会、町内会連合会など関係者向けに実施。一般町民向けは11~14日の日程を組んだ。関係者向けには2日で計約300人、一般町民向けは計1000人以上が参加する見通しだ。

 初日の9日、戸田町長や町議、各団体の代表者、報道陣など約150人が集まり、新型コロナ対策で密にならないよう6グループに分かれて内覧。アイヌ民族の歴史、営みを伝える博物館所蔵の貴重な民具など約700点の展示物や、工房での工芸品制作を見て回ったほか、体験交流ホールではアイヌ民族の物語の短編映像を鑑賞。最新技術を駆使したダイナミックな映像の演出に目を見張った。

 屋外ではチキサニ広場ステージで「鶴の舞」「イオマンテリムセ」など各地に伝わる伝統舞踊やムックリ演奏の公演も楽しみ、一連のプログラムを通じてアイヌ文化の奥深さや魅力を堪能。ウポポイ内のレストランでは、サケなど伝統食材を使った料理も試食した。

 同財団は内覧会に当たり、入場時に体温チェックを行ったり、鑑賞時に人と人の距離を空けたりと、開業に備えて感染防止策を試行した。

 内覧会に参加した戸田安彦町長と、北海道アイヌ協会の加藤忠理事長が報道陣の取材に対応。戸田町長は「ウポポイを通じアイヌ民族を世界に発信してほしい」と話し、「感染防止対策を整えて7月中には開業してもらえれば」と期待。加藤理事長は「各地の多様なアイヌ文化を紹介する素晴らしい施設ができた」と喜んだ。

 ウポポイは博物館と、体験・公演施設を配置した「国立民族共生公園」、全国の大学などに研究目的で保管されていたアイヌ民族の遺骨を納めた「慰霊施設」で構成。国はポロト湖畔の約10ヘクタールの用地に200億円を投じて施設を整備し、昨年5月施行の新法で先住民族と位置付けたアイヌ民族の誇りや尊厳を取り戻す政策推進の象徴とした。

 開業は4月24日から5月29日に先送りされ、さらに再延期になった。赤羽一嘉国土交通相は、再延期を発表した5月8日の記者会見で「まずは6月中に地元町民向けの内覧会を開き、状況が整えば開業に踏み切りたい」と発言。政府は、地元住民限定の内覧会を終えた後、国内の感染状況を踏まえて各地からの受け入れが可能と判断すれば、早期の開園記念式典の開催と開業を目指す。

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