新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴い、インターネットを介して行う「オンライン授業」が注目されている。ただ、インターネット環境の整わない地域や家庭も少なくなく、これらを踏まえた対策も並行して急務。むかわ町では、児童生徒にタブレット端末を貸し出すといった環境整備を検討するなど、今後の臨時休校を想定した措置、対応を模索している。
町内では鵡川高校(三村素道校長)が5月18~29日の期間、分散登校と並行してオンライン授業を試行的に実施。オンライン会議ソフト「Zoom(ズーム)」を活用し、教室内で3人の教職員が講師とパソコンの操作、出欠確認とそれぞれ役割を分担しながら、画面上に映る生徒たちに対して授業を行った。5月26日には1、3年生を対象に地理や数学などの科目を行い、画面を介して過去の振り返りや図表を使った授業を繰り広げた。
同校の前川保夫教頭は「最初は準備に時間がかかったが、慣れていくうちに短縮された。思っていたより(インターネット接続用の公衆無線通信)『Wi―Fi(ワイファイ)』の環境を持っている生徒が多かった」と振り返る。インターネット環境が整備されていない生徒に対しても個別に対応したという。
この取り組みについて、地元の教育関係者も注目。町内の小中学校の教員や町教育委員会の職員らが視察に訪れ、熱心に見学した。町教委学校教育グループの佐々木義弘主幹は「授業の遅れをどの程度補えるかは未知数だが、休校中も生徒と先生がコミュニケーションを取ることができ、子どもたちの状況を確認できる」と評価する。
一方で、オンライン授業は課題も多い。特に地方ではインターネット環境の整わない家庭も相当数あることが予想され、仮にあっても「特に小学低学年は保護者の協力がなければ、使用するのは難しい」との声もある。一つの授業に複数人の人員が割かれ、教員側の負担も通常の授業に比べて大きい。
町は、小中学校内の通信ネットワークの整備を今年度当初予算で計上しており、校内LAN(構内情報通信網)配線や無線AP(アクセス・ポイント)、タブレット端末保管用充電キャビネットの整備に取り組む。さらに自宅でオンライン授業を受けられるかどうか、インターネット環境の有無の調査に乗り出すなど課題を洗い出していく。町教委は「感染の第3、4波で臨時休校になった時に、各家庭で授業を受けられるような状況を目指していく」と今後の備えを急ぐ考えだ。