安平町早来瑞穂の髙林農園で経営者の髙林優一さん(56)が農薬などを使用せずに栽培した酒米「きたしずく」から、上川大雪酒造(上川管内上川町)が特別純米酒「上川大雪 特別純米 きたしずく 安平(生)」を製造した。道産酒米の中でも希少な有機酒米を原料とし、来期にはJAS(日本農林規格)認定マークを付けた販売が見据えられている。髙林さんは「町の特産品の一つにしたい」と意気込んでいる。
髙林さんは、1ヘクタールの田んぼで化学合成肥料や農薬などを使用せず、酒米を生産している。通常の栽培より除草剤を使わないため、週1~4回、機械で草を刈り、田んぼ周辺の環境を整備。肥料には町産の菜種のかすを活用している。
こうして栽培された「きたしずく」は、同じく酒米ですっきりとした味わいになる「彗星」とこくのある酒になる「吟風」の中間の特徴を持つ。特別純米酒は、味わいの決め手の一つとなる精米歩合が60%で、アルコール度数は16度。摘み立ての果実を思わせるフレッシュな香りと爽やかな酸味が魅力となっている。試飲した髙林さんは「すっきりさとこくのバランスがすごく良い。杜氏(とうじ)から有機で作った米は雑味が少ないと言われた」と感想を話す。
価格は1本(720ミリリットル)2200円。生酒240本を6日から、町内の道の駅あびらD51(デゴイチ)ステーション(追分柏が丘)、新沼商店(安平)、永田商店(早来大町)で販売している。今後、町物産館(早来大町)でも取り扱い、今月下旬には火入れした特別純米酒1560本が同社の道内特約店で販売される予定。3月以降、純米吟醸酒の生産も計画されている。
同社は道産にこだわった日本酒を製造し、23年6月には道内の酒蔵で初めて有機JAS認証を取得している。髙林さんは23年から有機酒米の生産を手掛け、来期に一定条件で3年以上有機栽培したことが認められれば、酒米はJAS有機農産物の認証を受ける。JAS認証マークを付けた新酒の販売が実現することになり、担当者は「希少な有機酒米に付加価値を生み出し、生産者の収益性の改善と、未来の農業環境の充実に寄与したい」としている。
「上川大雪 特別純米 きたしずく 安平(生)」を手に持つ髙林農園の髙林さん