埼玉県から白老町へ移住したアイヌ文化伝承者・宇梶静江さん(88)が、住宅そばの倉庫を文化伝承や集いの場にする工事を進めている。1日には宇梶さんの支援者がアイヌ民族の儀式に欠かせないいろり作りに取り組んだ。
倉庫はブロック造り平屋建てで、面積は約70平方メートル。宇梶さんが移り住んだ11月下旬から本格的に工事を進め、間もなく完成する。内部の床は板張りで、いろり、炊事場、トイレなどを設ける。いろりは特にアイヌ民族の営みにとって重要な存在で、神への祈りの儀式や語らいの場にするという。
1日には、「宇梶静江のアイヌ文化を伝播する会」を主宰する佐藤昌弘さん(79)=札幌市=ら支援者や、宇梶さんの親族が倉庫に集まり、炉を縁取るイチョウの木材をやすりで磨く作業などを行った。いろりの中には、町内でアイヌ語教室を主宰する大須賀るえ子さん(81)の実家で大切にされていた金属製の火鉢も備えられた。
倉庫の工事が近く終わった後、支援者らが集いを開く。施設はアイヌ民族の精神や知恵を学ぶ空間として活用し、宇梶さんは「さまざま人が交流し、アイヌ語を学ぶ若者らが民族の言葉で対話する場所にもなれば」と話す。