白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館(佐々木史郎館長)で2日、「ビーズ アイヌモシリから世界へ」と題した特別展が始まった。10万年以上前に誕生し、アイヌ民族をはじめ、世界のさまざまな民族が作り出してきた装飾品ビーズをテーマにしたイベント。約500点の展示を通じ、世界の多様なビーズの歴史や役割を紹介している。12月5日まで。
貝殻や木の実、石、ガラスといったさまざまな素材に穴を開け、ひもなどでつないだビーズ。約12万年前のイスラエルや北アフリカの遺跡で見つかった、穴の開いた貝殻が現存する最古のビーズとされる。誕生して以降、美への希求や人と人のつながりを示すために利用され、世界中の文化に広がっていった。
人類が生み出した物質文化の中でも最高傑作品の一つとされるビーズをテーマにした特別展では、国立民族学博物館(大阪府吹田市)と国立アイヌ民族博物館の所蔵資料、道内の遺跡から出土した考古資料などを中心に展示。「ビーズとは何か」「多様な素材」「あゆみ」「つくる」「ビーズで世界一周」「グローバル時代のビーズ」の6テーマで会場を構成し、過去から現代に至るまで世界の多様なビーズの歴史やその役割を紹介している。
会場では、パプアニューギニアやブラジルなどの先住民族が人間の歯で作った首飾りや、台湾原住民族がオオスズメバチの頭部をつないで制作した飾りなど、多種多様な素材の品々を展示。ビーズを施した世界各国の民族衣装も目を引く。渡島管内知内町の遺跡で発見された約2万年前(旧石器時代)の装飾品「玉」=国の重要文化財=など貴重な遺物もある。ガラス玉や石、金属などをつないだアイヌ民族の首飾り(タマサイ)なども並べ、独自のビーズ文化を生み出したアイヌ文化の特徴も発信している。
また、釧路市の彫金作家下倉洋之さんが制作した「銀細工のタマサイ」など現代の作品も飾っている。
国立アイヌ民族博物館は「世界に広がり、人々をつないだビーズを通し、人類とは何かという基本課題を正面から追究する展覧会としたい」と言う。共催の国立民族学博物館の池谷和信教授は「人類が作り出したビーズの魅力、奥深さに触れてほしい」と話す。開催期間中、研究者のシンポジウム、タマサイ作りの体験会など関連イベントも展開する。
観覧料は大人300円、高校生200円、中学生以下無料。この他にウポポイ入場料が必要となる。入場はオンラインによる事前予約制で、詳しくはウポポイのホームページに載せている。