新型コロナウイルスの感染拡大を受け政府は25日、特措法に基づく緊急事態宣言の対象地域に27日から北海道を追加することを決めた。緊急事態宣言が発令されるのは道独自の宣言を除き昨年4~5月、今年5~6月に続き3回目で、苫小牧市民からは効果を疑問視する意見や、「人との交流がますますなくなる」と懸念する声が聞かれた。高齢者を中心にワクチン接種が進むものの未接種の10代や親の世代の感染が急増し、経営の厳しさが増す飲食店、宿泊業などの不安も広がっている。
大成町の会社員澤田太樹さん(25)は「そもそも緊急事態宣言自体に意味がない」と苦言を呈する。「給付金を出すかどうかもはっきりしていない中で、また錦町などの飲食店が時短営業を要請されるのはどうなのか」と首をかしげる。
自身は顧客と対面で会話する際も気を使うといい、「お茶などを出してもらっても、マスクをずらすことにためらいを感じる。マスクでお互い表情が見えず、困惑することも多々ある」と仕事のしづらさが続く現状を嘆いた。
植苗の主婦緒方共さん(49)は「毎日の消毒など感染対策は十分している。これ以上何に気を付ければいいのか」とため息をつき、「もう宣言はあまり意味がないのでは」と述べた。中学2年の長男と小学4年の長女がおり、学校行事や上級生の修学旅行が中止になるのではないかと気をもむ。「コロナのせいとは言え、子どもの活動が制限されるのが一番かわいそうだ」と複雑な心境を吐露した。
糸井西町内会で会長を務める中野満信さん(72)は「まん延防止(重点措置)の時も催事などの町内会活動は自粛していたが、さらに会議も開きにくくなる」と話す。例年なら8月は夏祭りや盆踊り、9月は敬老会や運動会の時期。昨年同様、大きな集まりは中止を余儀なくされており、「ますますお互いの顔が見えない状況が続く」と不安な胸の内を明かした。
柏木町の苫小牧高専3年生、今優花さん(18)は「何度も緊急事態宣言が出されてきたので日常化しつつある。9月7日までは夏休みだが、宣言が出ると遠隔授業になり、学校行事も中止や延期になってしまいもどかしい」と語った。
ジンギスカン専門店「らむ助」(明徳町)は、25日からの臨時休業を決めた。「前回の宣言時から客は減り続け、時短営業だと食品ロスの負担も大きい。常連客に憩いの場を提供したい思いもあるが仕方ない」と苦渋の決断をした。
1回目の緊急事態宣言時以降、時短営業を続ける「コーヒーキッチン タピオ」(高丘)の三田村祐佳始オーナー(41)は「補償の中身を見た上、休業するか席数を減らして営業継続かを検討する。ネット販売などにも力を入れていくが早く元の営業時間に戻したい」とため息を漏らした。
グランドホテルニュー王子(表町)の黒井克哉総支配人(59)は「ホテル利用は感染者数の増減と連動しており、団体客のキャンセルも発生し、宿泊予約が入ってこない」と説明。「レストランの営業時間やアルコールの提供に影響が出るかもしれない」と懸念しつつ「今は防疫体制や消毒の強化など、粛々と対応していくしかない」と気を引き締めた。
カラオケスナックのみゅうじっくじゅん(音羽町)の成田淳子代表(57)は「これ以上感染者や亡くなる人が増えてほしくないので、宣言を出したのは妥当な判断」と一定の理解を示しつつ「宣言の長期化を心配している。年末にみんなが楽しめるようになっていてほしい」と願った。