白老町を舞台にした芸術文化活動・ウイマム文化芸術プロジェクト2021(文化庁、実行委員会主催)の一環で、「歩いて巡る屋外写真展・虎杖浜/アヨロ」が27日から10月11日までの期間、同町虎杖浜の海岸通りで開かれる。昭和30~40年代の虎杖浜の風景写真を海岸通りの建物壁面に飾り、水産のまちとして栄えた当時の日常を追想、体感してもらうイベント。実行委は「海岸通り自体を作品化する試み。虎杖浜の独特な風土を感じ取ってもらえれば」としている。
展示する写真は、山崎壽昭(としあき)氏(1927~2015年)の作品。山崎氏は王子製紙苫小牧工場の社員だった時代、同工場カメラ会に所属し、各地で撮影に取り組んだ。特に虎杖浜地区へ足繁く通い、水産業に携わる人々の営みなどを記録した。
ウイマム文化芸術プロジェクト実行委(星貢委員長)は、仙台藩白老元陣屋資料館へ大量に寄贈された山崎氏のネガフィルムやプリントに注目。半世紀以上前の虎杖浜の風景を捉えた写真を活用し、徒歩周遊型の屋外展覧会を企画した。
会場は虎杖浜の海岸通り全体とし、通り沿いにある建物の壁に拡大印刷した写真を貼り付ける手法で展示する。利用する建物は倉庫や民家の車庫、プレハブハウス、ポンプ場施設、空き家などさまざまで、15カ所に約20点を飾る。
展示作品は、水産物の行商へ向かう女性たち、ロープを引いてアヨロ海岸の浜へ漁船を揚げる人々、アヨロ川でいかだに乗って遊ぶ子ども―など昔の地域の日常と、人々の生き生きとした姿を切り取ったもの。中には、縦と横の長さが8メートル前後ある巨大な写真もある。虎杖浜の観音寺にも、山崎氏が残した写真のプリント約60点を並べる。
今回のプロジェクトは、海岸通り全体を作品化し、水産のまちとして発展した虎杖浜の昭和の風景と記憶をよみがえらせる試み。国際的な美術作家・奈良美智さん(61)が企画展示アドバイザーを務め、16日から展示作業を進めている。主催者は「新型コロナウイルス感染流行を踏まえ、密を避けて屋外で鑑賞してもらうことも考慮したプログラム。通りを歩きながら虎杖浜の風土を体感し、昭和の時代を追想してもらえれば」と言う。
観覧は無料。期間中の無料駐車場など詳しくはウイマム文化芸術プロジェクトのホームページに載せている。
ウイマム文化芸術プロジェクトは、芸術文化活動を通じて白老町の活性化や魅力の創出を図る事業。文化庁の「戦略的芸術文化創造推進事業」として、町民やアーティストでつくる実行委がプログラムを企画し、18年度から続けている。