身長157センチと小柄な体格ながら俊敏な身のこなしで迫り来るシュートに瞬時に反応する。スマイル新世代の苫小牧出身のゴーリーとしてゴールを守り抜いている。
前回2022年北京五輪は第3ゴーリーとしてメンバーになった。代表の活動では五輪3大会出場の前任者GK藤本那菜さんの背中を追い掛けてつかんだチャンス。練習では「常に後ろについてプレーを見たり、直接聞いたり」―。技術で心に響くものがあれば何でも吸収した。しかし五輪本番でのアイスタイムは無く「悔しい思いも味わった」と言う。だが、藤本さんから「まだ先はある。これからも頑張って」と激励され、”次の4年”と向き合ってきた。
言葉を胸に挑んだ約半年後の22年世界選手権では順位決定試合の強豪フィンランド戦に出場。相手に延長戦まで計61本ものシュートを浴びながらも無失点で切り抜ける好セーブを連発し、ペナルティーショット戦を勝利。歴史的勝利のGKとして世界選手権トップで過去最高位の5位獲得に大きく貢献した。
GKのポジションに初めて就いたのは小学2年の頃。それまではスケーターをしていた。所属チームにGKがいなくなり、交代で任されたことがきっかけ。やり遂げれば試合を支配できる守備位置の妙味が気に入り、「とにかくやりたい」と熱意をもって取り組み続けてきた。
「試合中のミスが直接負けにつながる」との認識だけに60分間、場合によっては延長戦の中でプレッシャーと闘い続ける。だが「セーブできて勝てたときの魅力もそれだけある―」との実感だ。試合後は何度も自身のプレーを振り返り鉄壁を目指す。最後のとりでの守護神がゴールで立ちふさがる。
「アイスホッケー部員募集」の張り紙―。目にした一枚のチラシが姉妹の人生を大きく突き動かした。もとはテレビで見たトリノ五輪フィギュアスケート競技に触発されて訪れたリンクでアイスホッケークラブのポスターに2人は興味を持った。光は5歳、栞は3歳でスティックを握った。
姉妹は着実に実力を付けていったが、大都会の大阪での競技環境に次第に限界を感じるようになった。2014年に16年ぶりの五輪出場を決めた「スマイルジャパン」の活躍に魅せられ、より高い競技のレベルを求めて”氷都”苫小牧へ家族でその年に移住した。
栞は「北海道でホッケーをしたい気持ちもあったけど、大阪の友達と離れるのは寂しかった」と当時の複雑な心境を明かす。そんな栞が苫小牧で出会ったのがGK増原海夕(道路建設)、FW輪島夢叶(同)だ。3人は中学、高校時代は三星ダイトーペリグリン(現・道路建設ペリグリン)で互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、いずれも今回の最終予選メンバーに名を連ねる掛け替えのないチームメートだ。
「苫小牧はホッケーIQも高めさせてくれたし、アイスホッケーの深さも知ることができた」と語るのは光。スケートのスピードを生かした速いプレーでゴール前にパックを運ぶ能力は代表でも発揮されてきた。
「苫小牧でお世話になった人たちに最終予選を1位で通過して『恩返し』がしたい」。”第二の地元”苫小牧で行われる最終予選に姉妹は初めて挑む。