繁殖馬セール 歴史と血統を紡ぐ ジェイエス 子供に”無敗三冠牝馬”も (18)

  • エンジョイ競馬, 特集
  • 2025年1月24日
2025年最初のサラブレッドの競り市場として実施されたジェイエス繁殖馬セール。最高額3410万円で取引されたシャウビンダー
2025年最初のサラブレッドの競り市場として実施されたジェイエス繁殖馬セール。最高額3410万円で取引されたシャウビンダー
2番目の高額1320万円で売買されたデッドリーは英国生まれ
2番目の高額1320万円で売買されたデッドリーは英国生まれ

  2025年最初の馬の競り市場となるジェイエス繁殖馬セールが22日、新ひだか町の北海道市場で行われた。「繁殖馬」と名付けられているように、競りに出るのは繁殖牝馬。38頭が上場され26頭が売却され、売上総額は1億2089万円(消費税込み)だった。

   馬の競りといえば、将来デビューを目指す若駒(当歳、1歳、2歳)が上場されるのが主で、毎年春から秋にかけて行われている。主立ったところでは日本競走馬協会が7月に苫小牧市のノーザンホースパークで開いているセレクトセールや、日高軽種馬農業協同組合が5~10月に新ひだか町他で実施しているHBA北海道市場があり、新聞やテレビのニュースなどで耳目に触れる機会はあると思う。

   繁殖牝馬セールといってもぴんとはこないかもしれない。その歴史は古く、今回のセールを主催している競走馬総合商社のジェイエス(新ひだか町)が1979(昭和54)年に開催したのが始まりとされている。第1回は日高町にあった馬の観光施設、日高ケンタッキーファームで行われ、上場馬はサラブレッドとアラブを合わせて26頭だった。しばらくは秋季のみの開催で、2008年から1月の冬季も加わって年2回の開催となった。繁殖経験をしている牝馬は受胎馬と空胎馬がいて、ほか競走を終えて繁殖の役割を担って産地に戻ってきた上がり馬(未供用馬)もいる。

   同セールで取引された繁殖牝馬が産んだ子供で活躍した馬は多く、無敗での牝馬三冠のデアリングタクト、オジュウチョウサン、オメガパフューム、ファストホース、ジャックドール、ラムジェットなどがG1などの大きなレースを勝っている。冬のセールでは23年と24年、最高額は1億円超で落札されている。

   今回最高価格馬は3410万円を記録したほか、数十万円のスタート価格から複数の競り合いにより落札額が数百万円に跳ね上がるなど活況を呈した。通信手段の発達により、オンラインでの競走馬オークションも市場を広げているが、競り会場独特の張り詰めた雰囲気は、緊張感もあり楽しい。

   売却した馬の子供が活躍したら売り主の気持ちは複雑? そう思いがちだが、血統の更新イコール新しい血の導入は、生産をする上で大切な要素の一つ。馬に携わるプロたちは強い馬、走る馬、売れる馬をつくるため、前向きに捉えている。

  (フリーライター・大滝貴由樹)

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