(1) 中庭展示 外と内か  ら体感を

  • 「場」の想像 2人の作家と三つの展示, 特集
  • 2021年8月16日
武田浩志「TAKEDAsystem Vol.10」2021年

  苫小牧市美術博物館では、中庭展示スペースで、空間を活用したインスタレーション(架設展示)を紹介するシリーズ企画「中庭展示」を2013年から開催しており、16回目の今回は札幌在住の画家・武田浩志さん(1978~)の作品を紹介している。また、特別展「発掘された日本列島2021」に連動する形で、彫刻家・藤沢レオさん(74~)の作品を紹介するロビー展示を開催。同館の細矢久人学芸員が、同時期にモエレ沼公園(札幌市)で開催されている藤沢さんの個展についても触れながら、作家2人の三つの展示について3回にわたり解説する。

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   画家でありながらも立体作品も手掛ける武田浩志の「TAKEDAsystem」は、アートを発信する「システム=仕組み・制度」としての建築型作品を設置する作品シリーズ(2002~)であり、今回が第10作目となる。自身にとって快適な展示空間の創出を念頭に始めたという同シリーズでは、その都度ゲストを招いての展覧会や演奏ライブなどのコラボレーションが果たされてきた。中庭という半屋外の空間において展開する今作は、自らの絵画をその内部に展示し個展を開催する、いわば入れ子の構造を備えた空間展示となる。

   透明の層を幾重にも積層する武田の絵画は、一見すると蛍光ピンクをはじめとするネオンカラーと即興的な線、ラメや金箔が盛られたグラフィックとしての華々しさを備えている。一方でスプレーでの吹き付けや即興的な描線、そして、単純明快なフォルムを縦横無尽に転写するその制作態度は、軽妙な即興性と確かな構成感覚の両立を感じさせる。同時にそこには、重層的な光沢感がもたらす堅牢性という相反的な魅力が同居しており、従来の絵画表現に対抗する力強さをも兼ね備えている。特別企画として限定公開も実施しているので、その魅力を中庭の外と内の両方から体感してほしい。

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   9月12日まで。午前9時半~午後5時。月曜休館。観覧料は一般600円、高校・大学生400円、中学生以下無料。

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