秋も深まる毎年この時期、記者は一度はむかわ町を訪れる。稲刈りを終えた田んぼに落ち穂目当てのハクチョウが飛来し、鵡川地区の目抜き通りはイチョウ並木が色づく。至る所の映えスポットに心を癒やされるが、最大の目的はやはりシシャモのすだれ干しだ。
水産加工各店がシシャモをヨシの茎で刺して束にし、軒先にずらりとぶら下げて天日干し。冷たい浜風にさらされることで、魚のうま味がぎゅっと凝縮される。鮮度の良さを示すようにつやが出て、風に揺られてキラキラと光り輝く。全国区の知名度を誇る秋の風物詩だ。
むかわ沿岸のシシャモ漁は、資源回復を図るため、2年連続で休漁中。各店は道東産を取り寄せ、すだれ干しを登場させている。記者が先週末に買い求めた店は十勝管内広尾町産だった。店主いわく、むかわ産は筋肉質で、道東産は脂が多いとのこと。違いも、また楽しい。
2006年に始まった地域団体商標制度で、「鵡川ししゃも」は最初の審査で地域ブランドになった。外国産の安価なカラフトシシャモと差別化を図る必要性に加え、各店の良質な品質管理や技術が認められてのこと。前浜資源の回復はもちろん待たれるが、産地を代替しても魅力的であることに変わりはない。(金)