横浜

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2024年11月9日

  横浜の夜空に、「ハマの番長」こと横浜DeNAベイスターズの三浦大輔監督が5度、宙に舞った。球団としては「マシンガン打線」を擁した権藤博監督以来、26年ぶりの日本一。勝利の瞬間、ベンチでOBの田代富雄さん、石井琢朗さんらコーチ陣も、肩を抱き合って泣いていた。超満員の横浜スタジアムで、優勝を待ちわびたファンの万感の万歳が続いた。

   思えば球団の歴史は、苦闘の歴史でもあった。立石泰則さんの傑作ノンフィクション「魔術師」(小学館)に、前身の大洋ホエールズの歴史が紹介されている。万年最下位だった大洋を監督就任の1960年に一挙に日本一へ押し上げ、菊池寛賞まで受賞した知将・三原脩さんの思いがつづられる。プロ野球はいったい、誰のためにあるのか。ファンのための「三原マジック」の本質が描かれる。

   暗黒時代を経て、四半世紀以上の歳月が流れて快挙を成し遂げた夜。横浜に住む友人にラインすると「すごいことになってます」と返ってきた。リーグ3位からの快進撃。巨大戦力のソフトバンクまで撃破しての下克上の達成。三原さんはハングリー精神のある選手、闘争心が顔に表れる選手を好んだ。今年のベイスターズも、そんな選手が多かった。天国で知将もほほ笑んでいるに違いない。(広)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。