「ドリームチーム」の言葉が引っ掛かっている。9月27日投開票が決まった自民党総裁選。岸田文雄首相は不出馬会見で「主流派も反主流派もなく新総裁の下で一致団結、真のドリームチームをつくってもらい、何よりも大切なことは国民の共感を得られる政治を実現すること」と述べた。派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で支持率を落とし、政治資金規正法改正でも他者の顔色をうかがわなければならなかった自身の「現実」とは正反対の姿を「夢」に掲げたのか。
もともとは1992年バルセロナ五輪で金メダルに輝いたバスケットボール男子のアメリカ代表を指した言葉という。解釈を広げ、文字通り「夢のようなチーム」の意味で、昨年WBCで優勝した野球の日本代表侍ジャパンにも使われた。
いずれにしても特に優れた選手、花形選手を集めたチームを指す。多くの候補が出て議論を交わすのは良いことだが、衆院選に向けた「選挙の顔」を意識するあまり、「国民の共感を得られる政治の実現」を忘れてもらっては困る。裏金事件の真相も明らかにせず、抜け穴を残したままトップを代えるだけなら、誰にとっての夢のチームなのか分からない。広辞苑にはドリームのもう一つの意味に「空想」と書いてあった。(吉)