活力

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2023年10月11日

  10月最初の日曜の夜、苫小牧市西部の住宅街に防災無線放送が流れた。放送塔から遠いのか内容がよく聞き取れない。2度目の放送を、窓を開けて確かめた家人が「クマに注意と言っている!」。翌日朝、トイレにいると、はっきりと聞こえた。「桜坂町で、クマ3頭が目撃されました」。間違いない。ついに苫小牧にも来た。いや「居た」というべきか。

   春早くから札幌市などで目撃が増加。道北では釣り人が殺され、道東では放牧牛を襲うヒグマも注目を集めた。日胆地区でも連日のように目撃されている。

   北海道のヒグマだけでなく東北の各地ではツキノワグマがキノコ採りの高齢者を襲ったり工場を占拠する例も。イノシシやサルの出没も増えているそうだ。

   雪が降ればヒグマは冬眠―と一律に考えるのも油断かもしれない。苫前村三毛別(現留萌管内苫前町三渓)の開拓集落を巨大なヒグマが襲って8人の命を奪った事件の、最初の襲撃は1915(大正4)年12月9日のことだ。油断や楽観は人とヒグマ、双方の不幸の始まりだ。

   山と渓谷社「人を襲うクマ」に、気になる下りがあった。高齢化が進み、都市への人口流出が止まらない。「この国には、もう野生動物を奥山に押し返す活力はない」。うなずくしかないのか。(水)

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