新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、苫小牧市内の小中学校が臨時休校に入った翌日の2月28日。休校中の子どもをサポートしようと、市内音羽町に構えたNPO法人「木と風の香り」の活動拠点で子どもたちに菓子や軽食の配布を始めた。新学期が始まるまでの約40日間、1日も休むことなく続けた。4月20日からの再休校に伴い、活動は今も実施中だ。「少しでも子どもとその親の助けになりたい」。きょうも満面の笑みで、子どもたちを出迎える。
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子どもたちが伸び伸びと過ごせる居場所をつくろう―と2017年6月、音羽町の自宅庭にこども食堂をオープン。毎月1回、庭に設けた食堂で昼食会を開き、週1度は放課後にも軽食を提供してきた。
新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2月下旬、3月に予定していた昼食会の中止を決断した。その直後、小中学校の一斉休校の知らせが届いた。こども食堂にいつも来てくれる児童らが行き場所を失い、しょんぼりと過ごす姿が脳裏に浮かんだ。「食事会ができないからと言って何も行動しないのではなく、今できることをしなければ」。思案の末、菓子の配布に思い至った。
始めは、同法人の事務所玄関前に菓子や飲み物を詰めた袋を用意し、立ち寄った子どもに自由に持ち帰ってもらう形でスタート。4月からはこども食堂の台所で白米を炊き、窓からおにぎりを配るという内容に変えた。大変な状況の中で子育てに奮闘する親も支援するため、食べ物は大人にも配布。取り組みは口コミで広がり、当初は1日当たり20人程度だった利用者が、3月に入ると60人を超えた。
利用者が増えるにつれて菓子や食材の購入費用がかさみ、継続が危ぶまれる場面もあったが、市内外から寄せられた善意で何とか窮地を乗り切った。食べ物を配るだけでなく、学校という居場所を失い、家庭や地域でも孤立している子どもたちの心のよりどころにもなりたいと、こども食堂のボランティアスタッフがちびっ子たちと公園で遊ぶ時間も設けた。
活動は4月8日でいったん終えたが、同月20日から小中学校が再休校となり、配布活動も再開。利用者はさらに増え、70人を超えた。1日に炊く米の量も5キロに上る。連日の作業に心が休まる暇はないが、屈託のない子どもたちから元気をもらっている。「コロナが終息するまで、何度も休校が繰り返されると思う。子どもたちの笑顔を守るため、まだまだ頑張らないとね」。おにぎりをもらい、うれしそうに帰途に就く小さな背中を見詰めながらつぶやいた。
(姉歯百合子)