1 長期間の学校休校で見えた男女格差 女性に家事、育児負担集中

  • 取材ノートから, 特集
  • 2020年12月15日
臨時休校で心身共に疲労した親を支援するため、NPO法人が行った弁当提供=5月、苫小牧市柏木町
臨時休校で心身共に疲労した親を支援するため、NPO法人が行った弁当提供=5月、苫小牧市柏木町
報道部・姉歯百合子
報道部・姉歯百合子

  苫小牧市内で新型コロナウイルスの感染者が出始めた2月末、感染拡大を防ごうと全小中学校が臨時休校に入った。当初は11日間の休校予定だったが、期間を延長して春休みを挟んだり、再開後も全国的に感染が拡大して再休校したり。学びやに子どもたちの声が戻ったのは6月だった。

   かつてない事態に直面した子育て中の親、特に仕事をする母親がどのような状況に置かれているのかを知りたくて、子育て団体の集まりや子育て支援活動を訪れて取材を進めた。見えてきたのは、女性活躍社会が叫ばれて久しい中でも、育児や家事といった家庭内の労働が女性に集中している現実だった。

   働く母親が休校でまず直面したのは、子どもの面倒を誰が見るのかという問題だ。取材で出会った母親の多くが「夫は仕事を休めないし、親も働いているので自分が休むしかない」と語った。仕事をしているという点では、男性も女性も同じ立場にもかかわらずだ。

   話を聞きながら自分ごとに置き換えて考えた。わが家の子どもが通う認可保育園は保育を継続してくれていたが、休園していたらどうなっただろうか。やはり母親の自分が休むしかないのかと思うと、釈然としない気持ちになった。

   子どもが急な体調不良を訴えた際、仕事を休んで対応するのは母親が多い。「子どもの面倒は母親が見るべき」という社会に根強く残る固定的な役割分担意識がそうさせるのだろう。コロナ禍という有事において、育児の負担が女性に集中している実態がより浮き彫りになった。

   子どもが自宅で過ごせば、女性が担う家事労働も増える。テレワークや在宅勤務など新しい働き方の導入が進むが、家事や育児との両立に悩む女性は多い。自宅にいるとはいえ仕事をこなし、1日3度の食事を提供するなど家事負担増で目の回るような忙しさだ。

   未就学児から中学生までの子どもを育てる30代の母親は、職場から特別に在宅勤務を許可してもらったが「幼い子どもがいるため日中にパソコンや資料を広げることは不可能」と嘆いた。「夫や子どもが寝静まった深夜に仕事をしている。自分の自由時間はなくなり、睡眠時間も削られたが、今はこうして働くしかない」という話も聞いた。

   世界経済フォーラム(WEF)が毎年公表する、男女格差を表すジェンダーギャップ指数で、日本は常に下位に位置。特に経済と政治の分野で男女格差が大きい。コロナ禍はこのことがもたらす意味を、われわれに分かりやすく伝えてくれたのではないだろうか。

  ◇

   コロナに始まり、コロナで終わろうとしている2020年。記者はどんな思いで取材を進めてきたのか。印象に残った出来事などと共に振り返る。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。