釣り人はいつも、はちきれんばかりの期待を抱えて第一投に臨む。気負いを伴ってさおを振り切った瞬間、日常のストレスから解き放たれ、気分は高ぶる。その場所が実績のあるポイントなら、釣れるか釣れないかはタイミング次第。魚がいない場合もあれば、いても餌に食い付かなかったり、イルカやアザラシが寄って魚が散ることもあったりする。そこで気になるのは海の中。魚はいるのか、いないのか―。海底はどうなっているのか―。ファミリーフィッシングの人気スポット、苫小牧港・西港の入船公園で防水機能付きのコンパクトデジタルカメラを海中に入れてみた。5月の海の様子をリポートする。
ただし港内の海中は透明度が低い。それなりに水深があれば、海底に太陽光はあまり届かず、暗くなる。手軽さが特長のデジカメだから、条件の厳しい港の水中撮影は高難度。来たる日の家族釣行に備えてもらおうと、難しい”ミッション”に挑戦した。
投げ、サビキ、ロックも楽しめるマルチポイント
入船公園は、フェリーターミナルと入船埠頭(ふとう)に挟まれた角地。当面の港湾整備の方向性を定めた苫小牧港の港湾計画上は緑地の位置付けで、築山と展望台、ベンチがある。フェリーの乗客を水際で見送ったり、外国からの大型貨物船の入出港の様子を間近に見たりして、苫小牧や港に親しみを感じてもらう「ウオーターフロント」づくりの一環で整備された。岸壁際にフェンス、敷地内に駐車場、トイレが整えられていて、家族連れが安心して遊べるよう考慮されている。
入船公園では、カレイやアブラコを狙った投げ釣り、チカやキュウリなどが釣れるサビキ釣り、ソイやガヤなどの根魚を釣るロックフィッシングが主に楽しめる。夏から秋の夜釣りでアナゴも狙える。
フェリーターミナル側は砂地
公園に面した水路の中央は航路で、西港内で最も深い水深(14メートル)が確保されている。飼料やコンテナ、油を積んだ大型の外航船が航行できる。公園の水際はそれより浅いため、航路に向かって数十メートルほど先から海底は急深の掛け上がりになっている。カレイなど魚はここに多く付く。今回撮影したのは岸壁から3メートル先の海底と直下。フェリー埠頭に隣接する南岸は8メートル前後の深さで、砂地が広がっていた。
当然、カメラが着底すると砂煙が舞う。カレイ類は好奇心が旺盛で砂煙が立つと注目し、寄って来るともいわれている。ブラーに虫餌を付けて軽く放ったり、足元に落としたりしてもいい。この時期、数釣りはできなくても40センチ超の良型がポツポツと上がる。かつて密生していた大型のヒトデは意外なほど少ない印象だ。
透明度は低く見通しは利かないが、所々に石があり、コンブなどの海藻が点在している。ポイ捨てされた空き瓶なども画像に映っていた。
根魚の団地みたい
一方、商港区に面する入船埠頭側の海底は石がごろごろしている。隣接する同埠頭は現在、主にフェリー型の大型貨物船が着岸するが、かつては井桁構造の岸壁の上のレールを大型の荷役機械が移動する石炭埠頭だった。海の中には堤防などのマウンドに使われる捨て石やコンクリート塊もあり、海藻が茂っている。ホヤの生育条件が整っているようで、群生している所もある。
その周りにソイやガヤの姿が複数あった。根魚たちには絶好の環境。3度カメラを海中に投入し、魚がレンズに寄ったカットは撮れなかったものの、少し離れた所では必ず魚影を捉えた。夕方から夜にかけて小型のガヤの食いが立つことがある。入船埠頭は構造上、魚の格好のすみかになっており、いわば根魚の団地のよう。海底は障害物が多いから根掛かりで仕掛けを失いやすいが、ソフトルアーのワームをうまく泳がせれば楽しめそうだ。
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機材は水深12メートルの防水に対応したコンパクトデジタルカメラ。釣行の際に面白い写真が撮れればと、手軽に水中撮影ができるアウトドア用のものを5年ほど前に記者が購入していた。露出、ピントを自動に設定し、4メートル強の長さの投げざおとPEラインを巻いたリールを使って、岸壁直下にゆっくりと下ろした。動画で撮影したデータを静止画像にした。