苫小牧から一度だけ米国本土へ行った。社用で赴き、カリフォルニアなど西部の3州に滞在した。ある日は飛行機を使って移動もしたが、バスに乗ってルート66を数百キロ動く道行きがあり、その広さに面食らった。直近なら人口3億2000万人が日本の国土の25倍の土地に暮らす超大国の一端に触れた思い出だ。
近頃、苫小牧の上映館で話題作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」を見た。19州が合衆国を離脱してテキサス、カリフォルニア両州の「西部勢力」と連邦政府が争う内戦が続く近未来の米国が舞台。ニューヨークから車で首都ワシントンへ行き、大統領への取材を狙うジャーナリストたちの旅路の行動を描いている。
内戦の原因は「大統領の圧政」にあったと暗示されつつも、連邦政府の核軍備管理や諸外国との関係はどうなっているかといった状況は捨象されたドラマだったが、功名心、愚かさと暴虐、裏腹の利他性など、登場人物たちの心模様が絡まる場面が続き、緊迫した展開に没入した。ベトナム戦争時、軍紀逸脱の男と密命を帯びた男―米国人二人が相対する筋書きの1979年の大作「地獄の黙示録」とも一脈通じる「戦地の旅」の劇にも思えた。日本時間あす、現実の米大統領選挙の投票に改めて目を凝らすつもりだ。(谷)