スイーツ

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年10月3日

  昨年の今ごろは胆振東部地震の発生から約1カ月がたち、ライフラインはほぼ復旧していたが、揺れへの不安は強く残っていた。被災地の人などはまだ、食事をしても食べた気持ちになれなかったのでは。

   「それでもケーキとか食べたくなったよ」と被災者から聞いたのは、震災から半年以上たってからだった。緊張状態が続けば、心も体も疲労する。そんな時に甘くてふわっとして美しいスイーツが、頭にぽっかり浮かんだ。一夜で家族や家を失った人もいるのにと思うと申し訳なく、ボランティアから寄せられる食べ物に「別腹」で食べるようなものもなく、思いはそっと胸にしまったという。

   苫小牧市では2013年から毎秋、スイーツまつり(苫小牧信用金庫主催)が開かれている。地元専門店の洋菓子を存分に味わえる人気の催事で、今年の開催は5日。併せてスイーツ選手権も開かれ、地元のパティシエたちが新作を出品して腕を試す。この時の作品を秋の新商品として売り出す店もあり、まちの住民はプロこん身の作を真っ先に味わえる。

   スイーツは繊細な作業の結晶であり、食べることができる芸術品。だから、少々値が張ってもカロリーが気になっても「頑張った私へのご褒美」に選ばれる。失意の中にある人々の心に明かりをともす力も秘めており、味覚の秋にじっくり味わい、パワーにあやかりたい。(林)

こんな記事も読まれています

紙面ビューアー

過去30日間の紙面が閲覧可能です。

アクセスランキング

一覧を見る

お知らせ

受付

リンク