足腰などの不具合、物忘れやイライラなど体や頭の不調が多くなる。「年のせいだ」で済ませていたら、PHP新書「老化って言うな!」に叱られた。
「俺、何しようと思っていたと思います?」。職場で、立ち上がったのに動きださない同僚に何度も聞かれたことがある。家でも家人が同じようなことを言う。「2階へ行ったのに、用件を思い出せなかった」。こちらが今、何を書こうとしていたのかを教えてくれるなら、教えてあげてもいい。
何かを考え付いた時に、別のことを重ねて考えるのが、この種の物忘れの主な原因だという。メモを活用することや、用件を済ませるまでは、繰り返し暗唱をしながらでも用件を記憶の奥に入れないように行動するといいらしい。
つい同じ物を買ってしまう。スマートフォンを見た後、目の焦点が合わない。腕時計がハンカチと一緒に洗濯籠に入っていた。なくした鍵が冷凍庫から出てきた―。失敗や不具合が増える。しかし、原因や対策を冷静に考える前に年齢と結び付け、すぐに劣化だ老化だと悲観し諦めては駄目―というのが書名の意味するところだ。
報道される高齢化や年金・社会保障の厳しい現状、認知症の猛烈な広がりにため息をついている人は多いはず。しかし、医療や介護の谷の深さや山の険しさを決めるのは個々人のありようでもある。豊かな経験と知恵に自信を持って過ごしたいもの―ですが。(水)