満身創痍

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  • 2024年10月29日

  岩倉博文苫小牧市長が28日、退職届を出した。昨年11月に出張先の韓国で倒れ心臓の手術後、2月に公務復帰。6月以降は副腎機能不全で入退院を繰り返し、8月下旬に復帰を果たすも肺炎で今月中旬、再び入院していた。周辺から健康状態を不安視され、引き際の助言もあったとみられるが8月の会見では「積み残された課題にエネルギーを持って取り組む」と再来年7月までの任期を全うする考えを示していた。近年は持病の腰の治療や股関節の手術もし満身創痍(そうい)。それでも乗り越えてきた経験から「今度も」と信じて疑わなかったに違いない。

   市長選で初当選した時、担当記者だった。少し痩せ、声もがらがらで迎えた選挙戦最終日。体調を気遣いつつ取材を申し込むと「全然大丈夫だ。うまく書けよ」と軽口をたたきながら大好きなたばこをくゆらせていた姿は今も鮮明に覚えている。元気な頃は週末も小まめに地域行事に顔を見せ、盆踊りの輪にも加わった。ブログ更新はライフワークだった。

   市政運営への評価はさまざまで舌禍もあったが、気さくな人柄に引かれる人は多かった。「ラストチャレンジ」と位置づけ臨んだ5期目。駅前の再開発着手は市長として、見届けたかったと思う。今はただ、お疲れさまと言いたい。(輝)

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