大学生だった30年ほど前、カーオーディオでクリスマスソングを早めにかけるのが何となくはやっていた。12月に入って聴くのは当たり前。若干早いのがおしゃれだと思っていた。
最初に11月に流した友人が後輩にキャーキャー言われたため、翌年から仲間内で張り合いだしたのは若気の至り。勘違いした一人が、得意顔で10月にかけ始めた時は皆閉口した。こういうのにはちょうどよいタイミングというものがある。
衆院選の投開票まであと10日ほど。裏金事件を受けた政治改革や物価高への対応など各候補がまなじりを決し論戦を繰り広げるが、秋口に「ママがサンタにキッスした」を流してクリスマスムードをかき立てようとしても無理があるように、受け狙いでトレンドワードを並べられても心に響かない。今聞きたい言葉だからこそ響く。不祥事が起きるたび刷新感を演出。「脱既得権益」「政治を変える」と聞かされた国民は何度も裏切られた。耳障りの良い言葉に警戒心すら抱いている。これ以上失望したくないとも思っている。失望してしまった若者らに届く、場当たり的ではない政策を望む。
選挙期間中に各党や候補が飛び交わせた威勢の良いせりふを、27日の投開票後も聞けるかにも注目したい。 (輝)