防災教育や多文化共生を目指すNPO法人エクスプローラー北海道の代表と苫小牧市拓勇東町内会の副会長も務める二刀流。時代や文化の変化に対応しながらまちづくりに貢献してきた。
1970年2月に横浜市で産声を上げ、5歳の時に秋田県に引っ越した。意欲的で何事にも興味を示す性格だったという。
人生の転機は中学3年生。米国のシアトルに1カ月間ホームステイし、これが後の人生を左右する分岐点となる。当時は英語をうまく話せず、帰国してから「もっと話せていたら」と後悔した。そこから一念発起して英語の勉強に打ち込み、高校時代はカナダのニューファンドランド島に約2年留学。語学のスキルを磨いたり、異文化を学んだ。
卒業後は米・ミネソタ州立大学の秋田校(現国際教養大学)に通い、秋田県内の病院の通訳秘書やソーラーカーの国際大会通訳の仕事に励み、語学漬けの日々を送っていた。
2000年、夫の転勤で札幌に移り住んだが、02年からは苫小牧に住んでいた弟と一緒に住むことになり、北海道には縁を感じていた。
苫小牧での生活にも慣れてきたころ、苫小牧中央幼稚園からの依頼で、有志の母親10人が英語本の読み聞かせなどに取り組んだ。保護者からの反響も良く、これを機に国際理解教育を推進していく団体の法人化準備に取り掛かった。
05年8月、国際理解教育に加え、環境問題や子どもの健全育成、まちづくりなどに取り組む団体として、NPO法人エクスプローラー北海道を設立した。
国際理解を広げていく事業では、市内の小学校などで留学生と日本文化を体験したり、ホストファミリーの募集も行った。児童に世界とのつながりを認識してもらい、多様な価値観を持ってもらいたいとの願いからだ。
防犯面では、危険を回避するためには学校と地域の連携や、子ども自らが対処する教育が必要だと感じた。人のつながりの希薄さも犯罪の要因の一つと考えている。注意すべき場所を調査し地図化した「地域安全マップ」も作成し、警察と連携しながら安全啓発に力を入れている。
22年10月には防災用風呂敷、23年10月には防災肩掛けバッグの製作など、身近なところから防災の発信に取り組んだ。子どもが防災の知識を学び、周囲の大人に発信できるよう「子ども防災士」の普及も続けている。
これまで活動を続けられたのは多くのサポートがあったから。「異文化や地域安全の意識を高めていくには、大人に伝えるのも重要だが、次世代を担う子どもたちが実践し、経験と知識を家庭に持ち帰ることが大切。人づくりが最終的にまちづくりにつながるので、さらに輪を広げたい」と飛躍を誓う。
(富樫陸)
◇◆ プロフィル ◇◆
佐藤一美(さとう・ひとみ)1970年2月9日、横浜市生まれ、エクスプローラー北海道代表と拓勇東町内会の副会長を務める。防災士や全国通訳案内士などの多様な資格を持つ。苫小牧市拓勇東町在住。