2本立て

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  • 2024年8月1日
2本立て

  1980年代の映画館は2本立て上映が多かった。休憩時間を挟んで期待せずに見た「もう1本」の方にはまることがたまにあった。「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」とセットの「K―9~友情に輝く星」がそれ。一匹狼の刑事と一癖ある警察犬のコンビが麻薬事件を解決するコメディーで鑑賞後しばらく、劇中のシェパードのような賢い犬との暮らしを夢見るほど心を奪われた。

   チケット1枚で2本目を見ようが見まいが料金は同じで、どちらも面白いとうれしい。入れ替え制ではなかったので一日中、館内に居座ることもできた。時間的にも気持ち的にもゆとりがある人たちに支えられたシステムはいつの間にか衰退した。ギフトセット、ランチ、旅行プラン…。お得感を出し、時にはバラ売りでは売れにくい商品を一緒に売り込む手法は時代を超えて存在する。ECサイトも購入履歴に基づき「こちらもいかが」と勧めてくるが、2本立てはどこか異質でおうような空気を漂わせていた。

   「コスパ」とか、時短で学ぶ「ファスト教養」がもてはやされる昨今。脱せかせか習慣、スローライフの先駆け的サービスとして見直されても良さそうだがサブスク全盛の時代で映画制作本数自体が減る中、復活を望んでも無駄か。(輝)

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