原因不明の高熱で会社近くの医院で診療を受けた。「マイナンバーカードありますか」。診療後に近くの薬局に出向くと、そこでも同様の質問が飛んできた。周りを観察してみると、結構「カード」を持参している人も多いようだ。
これが、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の問い合わせなのだろう。戸惑いもなく、簡単に手続きをしている人もいれば、薬局のスタッフに聞かれて思わずマイナンバーの番号を声を上げて伝え始める人も。スタッフが慌てて「番号は言わなくていいですよ」とたしなめていたが、その混乱ぶりに初めて直面。他人事とは思えなかった。
政府は今年12月で現行の健康保険証の新規発行をやめて、マイナ保険証に移行することを決めている。地方の診療所や医院でも機器が導入されはじめ、準備は整いつつあるかのように見えるが、その運用に利用者の戸惑いは多い。しかも、マイナ保険証の利用率は5月段階でわずか7・7%。低水準が続いている。
本当に保険証の発行をやめてしまうのか。当初からマイナ保険証の評判は悪いものの、ここまで来たら引き下がれないのか。国はどうも立ち止まることが苦手のようだ。利用者の立場に立ってよい方法を考える。当たり前のはずだが。(昭)