あと1週間ほどで胆振東部地震の発生から5年になる。厚真町で観測された最大震度7の揺れは、44人が亡くなり(災害関連死を含む)停電が道内のほぼ全域に及ぶほどのすさまじさだった。
大きな自然災害が起きるたび、私たちは被災経験を無駄にすまいと、それ以上の災害を想定して不測の事態に備える。しかし、自然の一部にすぎない人間に完璧な備えは不可能とでも言うように、天災は折々に想定を超える規模で起き、築き上げた備えを打ち砕く。
それでも、この地震で大きな被害を受けた三つの町の人々は前を向く。森林の再生へ植樹を続け、復興のシンボルとして新たな学校づくりに取り組み、事前復興計画の策定に着手している。その中で、球界で活躍して住民を元気づける選手や復興支援ソングをつくり被災者の心を癒やす歌手など、被災したふるさとの力になる若い世代が育っている。
被災した人々の「生死の懸かった時間を共有した」という連帯感が、不屈の精神となって、さまざまに作用している表れだろう。どんな復旧も失った大切な場所や命を元通りにはしてくれず、涙の乾く日は来ないのかもしれないが、ふるさとのあすを思う一つの気持ちは、まちを守り支えていく気がしている。(林)