「きょう、辞職の報道が動きだすとすれば午後2時以降―」。そんな冗談を言って少し目を離していたら2時すぎのテレビ画面に安倍総理辞意の速報。
体調不良報道や民放のニュース番組を見て、もしやとは思っていたが総理在職日数歴代1位記録を樹立した直後の辞職。驚いた。
権力者の孤独の闇の、恐ろしいほどの暗さを思った。取り巻きは忖度(そんたく)は競い合ってくれても本質的な進言や諫(かん)言は結局、してくれなかったのではないか。新型コロナウイルスをめぐる対策でも、定額給付金の金額の揺れや布マスク配布、GoToトラベルの始動時期などへの批判が収まらず、矛先は首相に向かい続ける。官邸への出入りに小さなマスクをほとんど1人で着け続ける姿は痛々しくも見えた。辞任の決断も1人で行ったという。
数カ月ごとの世論調査で、政権支持率の上下は分かるが、不支持理由の1位が、この数年ほとんど「人柄が信頼できない」だったことも記憶に残る。きのうの記者会見では国有地売却をめぐる公文書改ざん問題も質問された。首相は「国会で答弁させていただいた。十分かどうかは国民の判断」。加計・森友学園、桜を見る会をめぐる疑問は結局、残ったままだ。
自民党の次期総裁選びが始まった。信頼できる人を選んでいただきたい。新型コロナ対策や経済など課題は多い。まずは信頼できる政治。それが国民の願いだ。(水)