師に会いに行く

  • 土曜の窓, 特集
  • 2023年7月8日

  10年ほど前から犬と猫の保護活動を手伝っている。といっても大げさなことではなく、ごみ拾いをしたり(動物がごみを食べてしまうのでごみ拾いも活動の一つなのだ)、犬と猫の保護団体で時折掃除や散歩のお手伝いをしたり、寄付金を集めるフリマに参加したり。もともと動物に愛がある人間だとは言い難い。お世話より麻雀の方が好きだ。縁で始めた愛護活動は、いまだ続いているから不思議だ。

   保護活動を始めて、いろいろなシーンを目にすると、こんなに悠長にごみ拾いしていて大丈夫なのか? と焦り始めた。殺処分、虐待、多頭飼い崩壊。自分の家の犬だったら猫だったらと考えると、居ても立ってもいられない。そんな動物を早くゼロにしたい。早く早く。

   わたしは思った。わたしがもっと影響力のある人間になれば、この現状を皆に伝えられるのではなかろうかと。そうすれば才能ある若人の知恵で、犬と猫の幸せが進むのではなかろうかと。

   わたしは考えた。そうだ。「魚」といえばさかなクンのように。「動物」といえばさやかサンのようになるのはどうだろうか。それはいい考えだ! 子どもたちにもアプローチ出来そうだ! いや、待てよ、既に「動物」といえば、で日本一有名な方がいらっしゃるではないか。

   そう。ムツゴロウさん。ムツゴロウ王国で一世を風靡(ふうび)した、あの畑正憲さんである。

   2019年9月、飛行機に乗り向かった先は中標津空港。目的はムツゴロウさんにお会いすること。ムツゴロウさんが北海道にいることは、何となく知っていた。ネットで調べてみると、ムツゴロウ牧場なるものがあり、ご本人もいらっしゃる様子。これは行って直談判するしかない。

   「わたしに、2代目ムツゴロウを襲名させていただけないでしょうか!」

   気が合うと思うのだ。畑さんのご趣味は麻雀。徹マンが得意で10日連続麻雀をしたなどという伝説もあるようだが、わたしも雀荘バイトで鳴らした女。負けられない。

   いや、麻雀の勝負ではない。師に会いにいくのだ。動物のいろはを教わりにいくのだ。

   初めて降り立った中標津空港は9月の心地よい秋の風が吹き、間違いなくわたしを歓迎していた。(続く)

  (タレント)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。