オオジシギの調査で勇払原野へ オーストラリア火災の影響は

  • レンジャー通信, 特集
  • 2020年6月5日
電柱の上に陣取るオオジシギ。時々飛び立ち、特徴のあるディスプレイ飛行を行う

  去る5月21日、早朝4時に起床し、寝ぼけ眼をこすりながら勇払原野のとある場所に1人、向かいました。オーストラリアから渡って来たハト大の野鳥、オオジシギの調査のためです。同域ではこれまで2001年と17年の繁殖期に、同じ59メッシュ(区画)で調査を行っており、それぞれ107羽、77羽と、個体数の減少が確認されています。

   今回の調査は、オーストラリアで起きた大規模森林火災の影響について把握を試みることが主な目的。通常は2~3人のチームを組んで行うのですが、新型コロナウイルス感染予防のため、今年は当会のレンジャーが一人ずつ、3人で9メッシュを分担しました。道内ではほかに、釧路管内鶴居村と根室市で同様の調査を実施しています。

   私が担当したのは、遠くに苫東厚真発電所を望むメッシュ。海岸近くの草地では、同じく夏鳥のカッコウやノビタキ、アリスイなどの声がにぎやかです。獲物を狙っているのか、冬枯れの残るヨシ原の上をチュウヒが低く飛び、エゾシカは群れで闊歩(かっぽ)していました。調査開始と同時に、オオジシギの、あの「ザザザ・・・ゴォッー」という羽音が聞こえ、探すと、空に小さく1羽。その後、電柱の上に止まっている1羽も発見。10分間に、ディスプレイ(求愛行動)する姿、ディスプレイ時の声や音、静止する姿のいずれかを確認し、用紙に記録していきます。こうして3メッシュでの調査を終え、帰路に就きました。

   「オオジシギ調べ隊」の子どもたちとともに訪豪した今年1月。キャンベラのジェラボンベラ湿地は、近年にない少雨で干上がっており、オオジシギはわずかに残った水辺で暮らしていました。その時に周辺で起きていた森林火災は、私たちが身をもって体験したことです。訪問中、風向きによっては焦げたような匂いがし、煙で視界がかすむ日もありました。オオジシギの越冬地の自然環境が大きく変わったことは間違いないでしょう。火の手から逃げられなかったコアラが受けたような被害はないのかもしれませんが、その影響は気になるところです。今後、当会の東京事務所で集計される調査の結果からは、どんなことが判明するでしょうか。いずれ、お伝えできるものと思います。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ 中村聡レンジャー)

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