1985年に故郷で国際科学技術博覧会があった。期間中、秀才肌の友人T君が自転車で万博に出掛けた帰りに事故で亡くなった。
「銀河鉄道の夜」の主人公ジョバンニとカンパネルラのような仲だったが、中学校がT君は私立、自分は公立で疎遠になってしまった。彼の死はその1年後。そのせいか、作品に強烈な思い入れがある。読むたびにT君との日々がよみがえるからだ。
今年は宮沢賢治が来苫して100年目。この町で「牛」の詩を残し、その前年の来道で亡き妹とし子にささぐ詩「噴火湾」(ノクターン)を作った。古里の岩手以外に本道で着想を得た作品が多い。
鉄路の旅で雄大な自然と満天の星空に出合ったはず。改めて「銀河鉄道の夜」に登場する場面を思い返すと、似た景色が幾つも浮かぶ。感動的な風景とは裏腹に、最愛の妹を失った賢治はどんな心情だったか。21日の夜は駅前通りを歩いてみよう。100年前、同じ道をたどった賢治の気持ちになって。(藤)