北海道の季語

  • 土曜の窓, 特集
  • 2023年4月1日

  2月のコラムで、五十の手習いで俳句を始めたと書きました。AIRDOに赴任する前から東京で幾つかの句会に参加していましたが、札幌に来てからも句会への参加を続けています。コロナ禍以降、出席回数が大幅に減ってしまいましたが、所属結社の札幌支部の皆さんと楽しい時間を過ごしています。

   北海道で俳句を作っていて戸惑うことが二つあります。一つは、東京と1、2カ月季節の進み方が違うため、例えば3月に雪の句を詠んだり、5月に桜の句を詠んで東京の句会に投句すると、季節が合っていないと思われるか、北海道の人の句であると分かってしまうことです。もう一つは、句会で私が知らない北海道独自の季語などが登場してくることです。

   初めて参加した4月の句会のことだったと思いますが、「海明け(うみあけ)」という言葉が出てきました。海水浴の「海開き」じゃないよな、と思いながら調べると、流氷がオホーツク沿岸から去り、船舶の航行が可能となる日を意味する季語でした。流氷に関連してこんなすてきな季語があることに感動した覚えがあります。

   また、「木の根明く(きのねあく)」という季語も知りませんでした。角川俳句大歳時記(以下歳時記)にも載っていません。北海道も含めた雪国独特の季語で、春先にまず木の根元から雪が解けてくる様子を表します。言われてみれば確かにそうでした。どちらも氷や雪に閉ざされた世界から解放されてゆく喜びが感じられますね。これらは道民の皆さんなら俳人でなくてもご存じのことなのでしょうか。

   もう一つ「笹起きる」という季語も句会で初めて知りました。これも北海道だけの季語のようで歳時記には載っていません。春に笹の上に積もった雪が解けて笹がバサッと起き上がることを表すそうです。春になる勢いが感じられますね。

   その他にも、春にニシンの大群が産卵のため北海道の西海岸に押し寄せる様子を表す「鰊群来(にしんくき)」やリラ(ライラック)が咲く頃のふと冷え込む気候を表す「リラ冷え」なども北海道独自の季語です。

   印象に残るものは春の季語が多いですね。ちなみに「苫小牧市の貝」である「北寄貝」は、いつの季語だと思いますか? 正解は「春」です。歳時記の解説では、主な漁期が12月から4月までだからのようですが、苫小牧の皆さんの季節感と合っていますでしょうか。

  (AIRDO社長)

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